「退職金の運用方法はわかった。でも年金がもらえるまでの5年間、何で生活すればいいのか」
前回の記事(資産階層別カバードコール戦略)で、最も多くいただいた疑問がこれでした。実はこの「60歳〜65歳の5年間」は、年金収入がある前提とはまったく異なる、特別な対策が必要なフェーズです。
この記事では、FP2級保有者の視点から、この5年間をどう乗り切るかを3つの選択肢(繰上げ受給・資産運用・労働収入)に分けて解説し、資産階層別の具体的な組み合わせ方をお伝えします。
- 年金の繰上げ受給という制度的な選択肢の仕組みと損益
- カバードコールETFで5年間を「時限的に」乗り切る発想
- 資産階層別に「労働」をどう位置づけるべきか
私自身もFXとレバレッジETFで失敗を経験し、今はカバードコールETFを中心に配当収入を積み上げています。この経験を踏まえ、人生後半の「つなぎ期間」をどう設計するかをお話しします。
前回記事はこちら:
→【関連記事】60歳退職、資産1億円・5,000万円・2,000万円別カバードコール戦略|年金生活を安心に変えるポートフォリオ設計
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60歳〜65歳、年金収入ゼロの5年間という見落とされがちな盲点
前回記事との違い:「年金がある前提」から「年金が一切ない期間」へ
前回の記事では、年金収入(夫婦合計で月額約22万円を想定)がある前提で、生活費との差額をどう埋めるかを計算しました。しかし60歳で退職し、65歳から年金を受給する一般的なケースでは、その間の5年間は年金収入がゼロです。これは「不足分の穴埋め」ではなく、「生活費そのものをどう確保するか」という、まったく異質な問題です。
この5年間で必要な生活費の総額を計算する
ゆとりある生活費を月額約36万円とすると、5年間(60ヶ月)の総額は以下のようになります。
36万円 × 60ヶ月 = 2,160万円
この約2,160万円を、5年間でどう確保するかがこの記事のテーマです。
選択肢①:年金の繰上げ受給という制度的な解決策

繰上げ受給の仕組みとメリット・デメリット
年金の繰上げ受給とは、本来65歳から受給する年金を60歳から早めて受け取る制度です。
【メリット】60歳から年金収入が発生し、5年間の生活費不足を緩和できる。資産運用や労働に依存する必要性が下がる。
【デメリット】受給額が一生涯にわたって減額される(後から取り消せない)。長生きするほど、トータルの受給額で不利になる可能性がある。
繰上げ受給で減額される金額のシミュレーション

繰上げ受給の減額率は、1ヶ月あたり0.4%です(2022年4月以降の制度)。60歳から受給開始する場合、65歳との差は60ヶ月のため:
0.4% × 60ヶ月 = 24%減額
仮に65歳からの年金額が月20万円だった場合、60歳から繰上げ受給すると月15.2万円に減額され、この金額が一生涯続きます。
FP2級保有者として繰上げ受給をどう評価するか
繰上げ受給は「今すぐ収入が欲しい」というニーズには応えますが、24%の減額が一生涯続くことを考えると、安易に選択すべきではありません。特に資産に余裕がある方にとっては、繰上げ受給よりも資産運用や労働収入でつなぐ方が、長期的には合理的な場合が多いです。
選択肢②:資産運用(カバードコールETF)でつなぐ方法
5年間限定でカバードコールETF比率を一時的に上げる発想
前回記事では、カバードコールETFの配分を資産全体の15〜25%程度に留めることを原則としました。しかし「60歳〜65歳の5年間限定」という時限的な期間に限り、一時的にこの比率を引き上げるという発想があります。年金が始まる65歳以降は、元の安定的な配分比率に戻すという「時限的な戦略」です。
つなぎ期間が終われば元の配分比率に戻す「時限的」な考え方
これはあくまで「5年間だけの特例」として位置づけることが重要です。「65歳になったら元の配分に戻す」という出口を明確に決めておくことが、この戦略の成功の鍵です。
選択肢③:継続雇用・再雇用・労働収入との組み合わせ
再雇用制度の基本(65歳までの継続雇用が原則)
高年齢者雇用安定法により、企業は希望者に対して65歳までの雇用確保措置を取ることが義務付けられています。再雇用制度を利用すれば、60歳以降も一定の収入を継続して得られる可能性があります。ただし給与水準は現役時代より下がることが一般的です。
「お金のため」ではなく「健康のため」の労働という発想
労働には「収入を得るため」という目的以外に、「健康を維持するため」「社会との接点を持つため」「生きがいを感じるため」という側面があります。特に資産に余裕がある方にとって、労働は「生活費を稼ぐ手段」ではなく「健康・生きがいのための活動」として位置づけられるべきだと考えます。
資産階層別:5年間の具体的な戦略

【資産1億円】カバードコールETF中心+お小遣い程度の労働でしのぐ
資産1億円クラスの方にとって、5年間2,160万円という金額は、資産運用だけで十分にカバーできる範囲です。このクラスでは、労働は「お金のため」ではなく「健康のため」と位置づけることが現実的です。
通常時はカバードコールETF15%の配分ですが、5年間限定で25%に引き上げます。カバードコールETFを2,500万円程度に引き上げ、年利8〜10%で運用した場合、税引後で月額約13〜16万円の配当収入が期待できます。労働は「健康のため」という位置づけで十分です。
【資産5,000万円】カバードコールETFと労働の併用が現実的
資産5,000万円クラスでは、資産運用だけで5年間2,160万円をすべてカバーすることは、リスクを取りすぎる可能性があります。カバードコールETFからの配当収入と、再雇用などの労働収入を組み合わせることが現実的な戦略です。
通常時はカバードコールETF25%の配分ですが、5年間限定で35%に引き上げます。カバードコールETFを1,750万円程度に引き上げ、税引後で月額約9〜11万円の配当収入が期待できます。再雇用での月収(月15〜20万円程度を想定)と組み合わせることで、生活費を十分にカバーできます。
【資産2,000万円】労働収入を主軸に、資産運用は補助的に
資産2,000万円クラスでは、5年間2,160万円という金額は資産規模を超えており、資産運用だけでこの期間をカバーすることは現実的ではありません。再雇用などの労働収入を生活費の主軸とし、資産運用(カバードコールETF)はあくまで補助的な収入源として位置づけるべきです。
再雇用での給与(想定)約15〜18万円+カバードコールETF配当(税引後)約2〜3万円。合計で月約17〜21万円程度の収入を確保します。「資産運用に過度な期待をしない」という現実的な姿勢が重要です。
年金の繰下げ受給という選択肢も視野に入れる
もし資産・労働収入で十分にこの期間をカバーできるのであれば、年金受給を65歳よりさらに遅らせる「繰下げ受給」という選択肢も検討に値します。繰下げ受給の増額率は1ヶ月あたり0.7%です。70歳まで繰り下げる場合、0.7% × 60ヶ月 = 42%増額となり、この金額が一生涯続きます。
繰下げ受給は、資産1億円クラスのように資産運用や労働で十分に生活費をカバーできる方に向いています。長生きするほど繰下げ受給のメリットは大きくなりますが、健康状態や家族の状況によって判断が変わるため、一概にすべての方におすすめできるものではありません。
よくある質問(FAQ)
Q:繰上げ受給と繰下げ受給、どちらを選ぶべきですか?
A:資産階層によって異なります。資産2,000万円クラスで生活費の確保が優先される場合は繰上げ受給も選択肢になりますが、24%の減額が一生涯続く点を理解する必要があります。資産1億円クラスのように余裕がある場合は、繰下げ受給で将来の年金額を増やすことも検討に値します。
Q:5年間限定でカバードコールETFの比率を上げるのはリスクが高くないですか?
A:通常時より比率を上げる以上、リスクは相応に高まります。ただし「5年間限定」「65歳以降は元の配分に戻す」という出口を明確に決めておくことで、リスクを限定的にコントロールできます。
Q:再雇用での給与はどの程度を想定すればいいですか?
A:企業や職種によって大きく異なりますが、一般的に現役時代の50〜70%程度になることが多いとされています。具体的な金額は、ご自身の勤務先の再雇用制度を確認することをおすすめします。
まとめ:5年間は「資産階層×制度×労働」の組み合わせで乗り切る
- 60歳〜65歳の5年間は年金収入がゼロという特別なフェーズ
- 必要な生活費の総額は約2,160万円(月36万円×60ヶ月)
- 繰上げ受給は24%減額、繰下げ受給は42%増額が一生涯続く
- 資産1億円:カバードコールETF中心+健康のための軽い労働
- 資産5,000万円:カバードコールETFと労働収入の併用
- 資産2,000万円:労働収入を主軸に、資産運用は補助的に
「年金がもらえるまでどうするか」という問いに、唯一の正解はありません。しかし資産階層・年金制度・労働という3つの選択肢を正しく理解し、自分の状況に合わせて組み合わせることで、この5年間を不安なく乗り切る設計図を作ることができます。
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航海(こうかい)
免責事項
当ブログの情報は筆者個人の経験・見解にもとづくものであり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。年金制度・繰上げ繰下げ受給に関する情報は記事作成時点のものであり、最新の制度内容は日本年金機構等の公式情報をご確認ください。本記事の資産配分例は一般的なモデルケースに基づく参考情報であり、個別の状況によって最適な配分は異なります。投資判断・資産運用計画は、必要に応じてファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談の上、ご自身の責任において行っていただきますようお願いします。

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