「分配利回り12%」——カバードコールETFの紹介記事には、こういう景気のいい数字が並びます。
でも、私がずっと引っかかっていたのはここです。その12%、まるまる口座に残るわけじゃないですよね? 税引前の利回りに惚れて買ったのに、証券口座を開けたら手取りは思ったより少ない。そんな声を、私自身もSNSで何度も見てきました。
だからこの記事では、利回りの話は横に置きます。私が2026年7月に実際に受け取った配当を、銘柄ごとに「税引前 → 手取り(税引後)」の実額でそのまま並べます。FP2級を取ってから、私はこの「口座に本当に残った額」で物事を判断するようになりました。見かけの利回りではなく、手元に残る現金の話です。
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この記事でわかること
- 高配当・カバードコールETFの配当から、日本の特定口座ではいくら引かれるのか(実測)
- QQQI/SPYI/JEPI/JEPQ/AIPI/CEPI/453A、7つの銘柄の手取り率を横並び比較
- 「税引前利回り」を額面どおり受け取ってはいけない理由
- ROC(元本払戻)が多い銘柄でも、日本の投資家の手取りは変わらないという話
- 国内上場の453Aだけ税率が軽く見えた理由(答えは「二重課税調整制度」でした)
- これらの銘柄がNISA成長投資枠で買えない理由
※本記事の数字はすべて2026年7月に私の特定口座で実際に受け取った1か月分の実額です。将来の利回りを保証するものではありません。
結論:高配当・カバードコールETFの手取りは約72%、税金で約28%(約3割)引かれる
先に結論から言います。私が7月に受け取った米国カバードコールETFは、どの銘柄も税引前の約72%が手取りでした。言い換えると、約28%(およそ3割)が税金で引かれています。
なぜこの率になるのか。日本の居住者が特定口座で米国ETFの分配金を受け取ると、税金は二段階でかかります。
- 米国側で10%の源泉徴収(租税条約に基づく源泉)
- 日本側で20.315%の課税(所得税・復興特別所得税・住民税)
この二段構えで、ざっくり手取りは税引前の約72%に落ち着きます。「分配利回り12%」の銘柄でも、日本の投資家が実際に手にするのは、その約72%——体感で言えば9%前後まで下がる、ということです。これは一部の銘柄だけの話ではなく、私が持っている米国ETF全部で同じ傾向が出ました。

【本題】2026年7月に受け取った配当の実額(銘柄別)
ここからが本題です。私が7月に受け取った配当を、銘柄ごとにまとめました。米国ETFは現地通貨(米ドル)建てなので、まずドルで、カッコ内に円換算を添えます。手取り率は「手取り ÷ 税引前」で計算しています。
※円換算は1ドル=163.7円で計算しました。これは2026年7月28日時点の私の口座の時価評価額から逆算した実効レートで、記事34(SPYI解説)と同じレート・同じ基準日にそろえています。為替は毎日動くので、あくまで「7月時点だとこのくらいの円になる」という目安として見てください。
| 銘柄 | 種別 | 税引前 | 手取り | 手取り率 | 引かれた割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| QQQI | 米国ETF | 139.61ドル(約22,854円) | 100.14ドル(約16,393円) | 約71.7% | 約28.3% |
| SPYI | 米国ETF | 60.95ドル(約9,978円) | 43.72ドル(約7,157円) | 約71.7% | 約28.3% |
| JEPI | 米国ETF | 21.29ドル(約3,485円) | 15.28ドル(約2,501円) | 約71.8% | 約28.2% |
| JEPQ | 米国ETF | 41.38ドル(約6,774円) | 29.70ドル(約4,862円) | 約71.8% | 約28.2% |
| AIPI | 米国ETF | 68.26ドル(約11,174円) | 49.02ドル(約8,025円) | 約71.8% | 約28.2% |
| CEPI | 米国ETF | 52.84ドル(約8,650円) | 37.95ドル(約6,212円) | 約71.8% | 約28.2% |
| 米国ETF 合計 | — | 384.33ドル(約62,915円) | 275.81ドル(約45,150円) | 約71.8% | 約28.2% |
円に直すと実感が変わります。7月の1か月で入ってきた配当は税引前で約6万3千円。でも実際に口座に残ったのは約4万5千円です。その差、約1万8千円が税金。ドルの小数点表示で眺めているとピンと来ませんが、円に直すと「けっこう持っていかれるな」というのが正直な感想でした。
※AIPI・CEPIは月4回、QQQI・SPYI・JEPI・JEPQは月1回など、銘柄によって分配の回数が違うため、上表は7月中に受け取った回をすべて合算した金額です。株数は7月時点でQQQI220口・SPYI115口・JEPI55口・JEPQ65口・AIPI70口・CEPI50口を保有しています。

見てのとおり、銘柄が違っても手取り率はほぼ横並びで約72%です。QQQIもSPYIも、AIPIのような新しめのETFも、日本の投資家から見れば「引かれ方」は同じ。ここは正直、私も集計してみて「見事にそろうな」と思いました。税金は銘柄の中身ではなく、受け取る人(=日本の特定口座)の側で決まる、ということがよくわかります。
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国内上場の453Aだけ「実効12%」だった謎を、最後まで追いかけた
ひとつだけ、毛色の違う銘柄があります。453A(iシェアーズ 米国債20年超 プレミアムインカム ETF)です。米国の長期国債ETF「TLT」を持ちながらコールオプションを売る、いわゆるカバードコール型。運用はブラックロック・ジャパンで、東証に上場している国内ETF(毎月決算)なので、分配金は円で受け取ります。
7月の明細は、こうでした。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 分配金(明細上の「税引前」) | 2,610円 |
| 所得税 | 171円 |
| 住民税 | 144円 |
| 受取額 | 2,295円 |
引かれたのは315円。税引前2,610円に対して実効約12%です。国内の通常税率20.315%より、ずいぶん軽い。
私は最初、「元本払戻(特別分配金)が混ざっていて、その分が非課税だったのでは」と考えました。高分配のファンドではよく出てくる話です。でも、調べてみたら答えは違いました。順番に書きます。
まず、ETFに「元本払戻金」は存在しない
ここは私の思い込みでした。ETFの分配金には、元本払戻金(特別分配金)という仕組みがそもそもありません。 ETFの分配金は「決算期間中に発生した利子や配当などの収益から運用コストを引いた全額」を払うと定められていて、投資信託のように個別元本を取り崩して払い出す(=特別分配金)ことは行われないからです(大和アセットマネジメントのETF解説より)。
つまり、実効12%の理由を「元本払戻だったから」で説明することはできません。
正体は「二重課税調整制度」だった
答えは、2020年1月から始まった二重課税調整制度でした。国内の投資信託・ETF・REITなどが外国の資産を持っている場合、ファンドの段階で外国に払った税金の分だけ、国内で源泉徴収される所得税を差し引いてくれる仕組みです(楽天証券「投資信託等に係る二重課税調整について」)。453Aは中身が米国のTLTなので、まさにこの対象です。
楽天証券が公開している計算式に私の明細を当てはめたら、数字がぴたりと合いました。
- 課税対象金額(外国所得税を足し戻した金額)=2,880円
- うち外国所得税相当額=270円
- 明細の「税引前」2,610円 = 2,880円 − 270円
- 所得税 = 2,880円 × 15.315% − 270円 = 171円 ← 明細と一致
- 住民税 = 2,880円 × 5% = 144円 ← 明細と一致(住民税はこの控除の対象外)
- 受取 = 2,610円 − 171円 − 144円 = 2,295円 ← 明細と一致
※課税対象金額2,880円・外国所得税相当額270円は、私が明細の税額から逆算した数字です(この2つを置くと、4つの数字がすべて一致します)。この「外国所得税額」は毎回の分配金明細には出ず、年1回発行される特定口座年間取引報告書でまとめて確認できる仕組みなので、私自身もまだ現物では見られていません。年間報告書が届き次第、答え合わせをするつもりです。
私が実際に負担した税金は、270円+171円+144円=585円。本当のグロス2,880円に対して、これはぴったり20.315%です。
つまり——税金が軽かったのではありません。外国で先に払った分を、日本側が引いてくれていた。二重取りされていなかった、というだけの話でした。「12%」は、外国所得税を引いたあとの金額を分母にしていたから、そう見えていただけです。
見かけの88%ではなく、本当は約79.7%
この見方で計算し直すと、453Aの手取り率は約79.7%(2,295円 ÷ 2,880円)。米国ETFの約71.7%より高いのは事実です。ただし理由は「国内ETFだから米国の税金がかからない」ではありません。中身にはちゃんと外国税がかかっていて、それを国内ETFなら自動で調整してくれる——ここが差の正体です。
米国ETFを直接持っている場合、この調整は自動では入りません。取り戻したければ確定申告で外国税額控除を使うことになります。「国内ETFのほうが手取りが多い」の中身は、税率の違いではなく、手続きの自動化の差だった、というのが私の結論です。
よくある誤解:「ROCが多い銘柄は税金が得」は日本では通用しない
カバードコールETFを調べていると、必ず出てくるのがROC(Return of Capital=元本払戻)という言葉です。「このETFは分配の大半がROCだから税効率がいい」という説明を見たことがある人も多いと思います。
ここはきっぱり注意が必要です。その「ROCは税効率的」という話は、あくまで米国の投資家にとっての話です。米国では、ROC部分はその年の課税が繰り延べられます。でも、日本の居住者が特定口座で受け取る場合、米国側の分配区分がROCかどうかに関係なく、原則として通常の配当と同じように課税されます。課税の繰り延べにはなりません。
実際、今回のQQQIもSPYIも、区分の話とは無関係に手取りは約72%でした。ROCの多寡と、私の口座に残った額は、きれいに無関係だったわけです。私はこの「タコ足配当(元本払戻)なのか?」というテーマを別の記事で調べましたが、その調査の”税引後の答え合わせ”が、今回の実測編という位置づけです(→ カバードコールETFはタコ足配当か(ROC調査))。
なお、JEPI/JEPQはROCが0%で、分配は普通所得(配当)として課税されます。
そしてもうひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。JEPI・JEPQは、NISAの成長投資枠では買えません。
理由は制度側にあります。金融庁の説明どおり、成長投資枠は「①整理・監理銘柄」「②信託期間20年未満・高レバレッジ型・毎月分配型の投資信託等」が対象から外されています。JEPI・JEPQはどちらも毎月分配なので、この②に引っかかる。楽天証券も米国ETFについて「毎月分配型(略)は対象外」と明記しています(2026年7月時点)。
ここは証券会社ごとの方針の違いではなく、制度側の除外要件です。だから「A社では買えてB社では買えない」という話にはなりません。同じ理由で、本記事で扱っているQQQI・SPYI・AIPI・CEPI、そして国内上場の453A(毎月決算)も、成長投資枠の対象外です。
私の保有がすべて特定口座なのは、節税を考えなかったからではなく、そもそもNISAで買えないからというのが実情です。高分配ETFを「NISAで非課税にすれば手取りが増える」と考えている人は、まずここで足が止まります。
※対象商品は制度改正や銘柄の分配方針の変更で変わり得ます。買う前に、必ずご自身の証券口座のNISA対象商品リストで最新の状況をご確認ください。
この記事が向いている人・そうでない人
向いている人
- 高配当ETFの「税引前利回り」を見て、実際いくら残るのか知りたい人
- カバードコールETFを特定口座で買っている/買おうとしている人
- 見かけの数字ではなく、手取りベースで資産形成を計画したい人
あまり参考にならないかもしれない人
- NISA枠だけで完結させたい人(本記事の銘柄は毎月分配型のため成長投資枠の対象外で、数字はすべて特定口座の実額です)
- 米国居住者・米国で確定申告する人(税制がまったく別です)
よくある質問(FAQ)
Q. 結局、高配当ETFの配当は何割引かれるの?
A. 私の2026年7月の実額では、米国ETFはどの銘柄も約28%(およそ3割)引かれ、手取りは約72%でした。日本の特定口座で受け取った場合の実測値です。円に直すと、税引前が合計約6万3千円、手取りが約4万5千円でした(1ドル=163.7円で換算)。
Q. 「分配利回り12%」なら、手取りでも12%もらえる?
A. いいえ。税引前の利回りが12%でも、米国ETFなら手取りは約72%に落ちるため、体感の手取り利回りは9%前後まで下がります(単純計算であり、将来を確約するものではありません)。
Q. ROCが多いETFは税金が安くなる?
A. 米国の投資家にとってはそう言えますが、日本の居住者が特定口座で受け取る場合は当てはまりません。区分に関わらず通常どおり課税され、今回の実測でも手取りは約72%でした。
Q. 国内上場ETF(453Aなど)は手取りが多い?
A. 米国ETF(約71.7%)より高いのは事実で、私の7月実額では約79.7%でした。ただし明細だけ見ると「実効12%・手取り88%」に見えるので注意が必要です。453Aは中身に米国のTLTを持っており、ファンドの段階で外国所得税が引かれたあとの金額が明細の「税引前」として表示されているためです。外国所得税を足し戻した本当のグロスで計算すると、負担はちょうど20.315%になります。理由は二重課税調整制度(2020年1月開始)で、国内ETFなら外国税との二重取りが自動で調整されます。
Q. 453Aの実効12%は「元本払戻(特別分配金)」が混ざっていたからでは?
A. 違います。ETFの分配金には元本払戻金(特別分配金)という仕組みがそもそもありません。ETFは決算期間中の利子・配当収益から運用コストを引いた全額を分配する決まりで、個別元本を取り崩す分配は行われないためです。実効12%の理由は二重課税調整制度でした(本文で計算過程を公開しています)。
Q. JEPI・JEPQはNISAで買える?
A. 成長投資枠では買えません。成長投資枠は「毎月分配型の投資信託等」を制度として対象から除いており、JEPI・JEPQはどちらも毎月分配だからです。証券会社ごとの違いではなく制度側の除外要件なので、どの証券会社でも同じです。QQQI・SPYI・AIPI・CEPI・453Aも同じ理由で対象外です(2026年7月時点)。
Q. 外国税額控除で米国の10%は取り戻せる?
A. 確定申告で外国税額控除を使えば、米国源泉分の一部が調整される場合があります。金額や可否は個人の所得状況で変わるため、国税庁の情報や税理士に確認してください。本記事の手取りは、控除前の受取実額です。
まとめ:利回りより「口座に残った額」で考える
7月の実額を並べて、あらためて思ったことがあります。税引前利回りは「入り口の数字」でしかない、ということです。
- 米国カバードコールETFの手取りは、銘柄を問わず約72%(約28%=およそ3割が税金)。7月は税引前約6万3千円に対し、手取り約4万5千円
- 手取り率は銘柄の中身ではなく、受け取る側(日本の特定口座)で決まる
- ROCが多くても、日本の投資家の手取りは変わらない
- 国内上場の453Aは手取り約79.7%。明細上は「実効12%」に見えるが、それは外国所得税を引いたあとの金額が分母になっているため。二重課税調整制度が効いていた
- これらの銘柄は毎月分配型のため、NISA成長投資枠では買えない
私はFXで数百万円を失ってから、「都合のいい数字を信じない」ことを自分に課しています。利回りの大きさに惹かれる前に、手取りでいくらかを一度計算してみる。それだけで、買った後の「思ったより少ない」を減らせるはずです。次の寄港地では、この配当を再投資に回すつもりです。
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参考(あわせて読みたい)
- 記事30:カバードコールETFはタコ足配当か?ROCを調べた(親記事)
- 記事28:初めて配当を受け取ったときの実績記録
- 記事33:QQQIとは?中身をやさしく解説
- 記事34:SPYIとは?S&P500版カバードコールの解説
- 記事22:私の現在のポートフォリオ(保有銘柄・株数)
- 記事24:楽天証券での買い方(画面キャプチャ付き)
本記事で参照した公式情報(2026年7月時点)
- 金融庁「NISA特設ウェブサイト」(成長投資枠の対象商品・除外要件)
- 楽天証券「投資信託等に係る二重課税調整について」(グロスアップ計算・住民税は控除対象外)
- 楽天証券「NISA成長投資枠で米国株投資」(毎月分配型は対象外)
- 大和アセットマネジメント iFreeETF「ETFのよくある質問」(ETFに元本払戻金=特別分配金は生じない)
- 東証マネ部!(日本取引所グループ)「452A/453A」(453Aの正式名称・投資対象TLT・毎月決算)
- 国税庁 タックスアンサー(外国税額控除・分配時調整外国税相当額控除)
免責事項:本記事は筆者(航海)の2026年7月時点の実際の受取配当をもとにした個人の記録であり、特定の銘柄の購入や投資手法を推奨するものではありません。分配金・利回り・税額・為替は今後変動します(本記事の円換算は1ドル=163.7円・2026年7月28日時点の実効レートによる概算です)。税制・NISAの取り扱いは制度改正により変わることがあり、最新情報は金融庁・国税庁・各証券会社の公式情報でご確認ください。投資は元本保証がなく、損失が生じる可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。

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