S&P500をベースにしたカバードコールETFとして代表的なJEPIとSPYI。そして比較基準となる純粋なS&P500インデックスETFのVOO。
この3つを数値データで徹底比較します。
「JEPIとSPYIは何が違うのか?」「VOOと比べてどちらが得なのか?」という疑問に、データをもとにお答えします。
比較する3つのETF
- JEPI:カバードコールETF・JPモルガン・2020年5月設定
- SPYI:カバードコールETF・NEOS・2022年8月設定
- VOO:インデックスETF・バンガード・2010年9月設定
すべてS&P500をベースにした商品ですが、目的と戦略が根本的に異なります。
基本スペック比較
- JEPI:分配利回り約7〜8%・経費率0.35%・毎月分配・ELN方式
- SPYI:分配利回り約12%・経費率0.68%・毎月分配・コールスプレッド
- VOO:分配利回り約1.3%・経費率0.03%・四半期分配・オプション戦略なし
JEPIとSPYIの戦略の違い
同じS&P500ベースでも、オプション戦略が大きく異なります。ここが2つのETFの最大の違いです。
JEPIの戦略:ELN(エクイティ・リンク・ノート)方式
ELN(Equity Linked Note)とは、株式の値動きに連動した仕組債のことです。「銀行に100万円預けると、株価が上がれば利息が増えて、下がれば利息が減る特別な預金」のようなイメージです。
JEPIは株式を直接保有しながら、このELNを組み合わせることでオプション収入を得ています。
- ディフェンシブ(守りに強い)銘柄を中心に保有
- 低ボラティリティ(価格変動が小さい)重視の設計
- 安定した分配金が特徴
SPYIの戦略:コールスプレッド方式
SPYIを理解するには、「アウト・オブ・ザ・マネー」と「コールスプレッド」という2つの言葉を知っておく必要があります。

アウト・オブ・ザ・マネーとは?
オプション取引には以下の3つの状態があります。
- イン・ザ・マネー:すでに利益が出ている状態
例:現在の株価が100円のとき「90円で買う権利」→ すでにお得 - アット・ザ・マネー:ちょうど損益ゼロの状態
例:現在の株価が100円のとき「100円で買う権利」→ ちょうど同じ - アウト・オブ・ザ・マネー:まだ利益が出ていない状態
例:現在の株価が100円のとき「110円で買う権利」→ 今は割高
「現在の株価より少し高い価格で買う権利を売る」のがアウト・オブ・ザ・マネー戦略です。株価がある程度上昇してもその恩恵を受けられる利点があります。
コールスプレッドとは?
コールスプレッドとは、コールオプションを「売る」と同時に「買う」ことでリスクを限定する戦略です。「保険をかけながら収入を得る」イメージです。
- コールオプションを売る → プレミアム収入を得る
- コールオプションを買う → 株価が大きく上昇した場合の損失を限定する
SPYIはこのコールスプレッドを使うことで、急激な株価上昇時でも損失を限定しながら安定した収入を得る設計になっています。
SPYIの特徴まとめ:
- S&P500全体に連動(ディフェンシブ銘柄に偏らない)
- アウト・オブ・ザ・マネー+コールスプレッド戦略
- 上昇相場でもある程度の恩恵を受けられる
- JEPIより高い利回りを実現

年別トータルリターン比較(配当込み)
- 2022年:JEPI+約3% / SPYI▲約5% / VOO▲約18%
- 2023年:JEPI+約9% / SPYI+約20% / VOO+約26%
- 2024年:JEPI+約13% / SPYI+約20% / VOO+約25%
ポイント①:2022年の下落相場
2022年は米国株全体が大きく下落した年です。VOOが▲18%の中、JEPIはプラスを維持しました。SPYIもVOOより下落幅が小さく、カバードコール戦略の下落耐性が発揮された年です。
ポイント②:2023〜2024年の上昇相場
上昇相場ではVOOが優位ですが、SPYIはJEPIを大きくアウトパフォームしています。アウト・オブ・ザ・マネー戦略により、上昇相場でもある程度の恩恵を受けられたことが理由です。
配当込み vs 配当なしリターンの違い
SPYIの場合:
- 2022年:配当なし▲約17% / 配当込み▲約5%
- 2023年:配当なし+約8% / 配当込み+約20%
- 2024年:配当なし+約8% / 配当込み+約20%
分配金がトータルリターンに大きく貢献していることがわかります。ただし高い分配金を出すたびに課税されるため、長期的な複利効果はVOOに劣る点は把握しておく必要があります。

最大ドローダウン比較
- JEPI:約▲14%(最も下落耐性が高い)
- SPYI:約▲20%(JEPIより下落幅が大きい)
- VOO:約▲24%(2022年の弱気相場)
JEPIの下落耐性は3銘柄の中で最も優秀です。SPYIはJEPIとVOOの中間に位置しており、高配当と下落耐性のバランスが取れた設計といえます。
分配金の比較
JEPIの分配金推移
- 2020年:0.4ドル台(設定直後)
- 2021年:0.3ドル台(相場が穏やかでプレミアム収入減)
- 2022年:0.4〜0.6ドル台(相場が荒れてプレミアム収入増)
- 2023年:0.3〜0.4ドル台(前年比約24%減)
- 2024年:0.3ドル台(横ばい)
SPYIの分配金推移
- 2022年(8月〜):約2ドル台(設定直後)
- 2023年:約5〜6ドル台(安定)
- 2024年:約6ドル台(安定推移)
- 2025年:約6.15ドル(安定維持)
重要な気づき:カバードコールETFの分配金はボラティリティと連動しています。相場が荒れているほど分配金が増え、穏やかなときは減ります。「いつも同じ金額がもらえる」わけではない点は把握しておきましょう。
経費率がリターンに与える影響
- VOO:0.03% / 100万円投資時の年間コスト約300円
- JEPI:0.35% / 100万円投資時の年間コスト約3,500円
- SPYI:0.68% / 100万円投資時の年間コスト約6,800円
SPYIの経費率はVOOの約23倍ですが、分配利回りが約12%とVOO(約1.3%)を大幅に上回るため、高い分配利回りで経費率のコストを十分にカバーできています。
数値から見えてくる真実
① JEPIは「守りの配当ETF」として一貫している
下落耐性・安定した分配金という点でJEPIの強みは数値でも証明されています。ただし上昇相場でのリターンはSPYIにも劣後する場面が増えています。
② SPYIはJEPIとVOOの「いいとこ取り」を目指した設計
上昇相場ではVOOに近いトータルリターンを出しながら、高い分配金も提供しています。アウト・オブ・ザ・マネー+コールスプレッド戦略の威力が数字に表れています。
③ 純粋な資産成長ならVOOが最強
長期の資産成長だけを目的とするなら、経費率の低さと上昇相場での強さからVOOが最も優れています。NISAのインデックス投資と同じ考え方です。
3つのETFはこう使い分ける
- 資産を増やす:VOO(またはeMAXIS Slim S&P500)
- 安定した配当収入:JEPI
- 高配当×上昇追従:SPYI
私のポートフォリオでは以下のように役割を分けています。
- NISAの口座:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)で資産成長
- 特定口座:JEPI・SPYIを組み合わせて毎月の配当収入を積み上げる

まとめ
- 2022年リターン:JEPI+3% / SPYI▲5% / VOO▲18%
- 2023年リターン:JEPI+9% / SPYI+20% / VOO+26%
- 2024年リターン:JEPI+13% / SPYI+20% / VOO+25%
- 最大ドローダウン:JEPI▲14% / SPYI▲20% / VOO▲24%
- 分配利回り:JEPI約7〜8% / SPYI約12% / VOO約1.3%
- 経費率:JEPI 0.35% / SPYI 0.68% / VOO 0.03%
今回学んだ専門用語のおさらい:
- ELN(エクイティ・リンク・ノート):株式連動型の仕組債。JEPIが活用
- アウト・オブ・ザ・マネー:現在の株価より高い価格でオプションを売る戦略。上昇相場にも追従しやすい
- コールスプレッド:オプションを売りながら買うことでリスクを限定する戦略。SPYIが活用
「守りのJEPI」「バランスのSPYI」「成長のVOO」と覚えておきましょう。
次回はNASDAQ100系のJEPQとQQQIを数値で徹底比較します。
航海(こうかい)
免責事項
当ブログの情報は筆者個人の経験・見解にもとづくものです。数値データは参考情報であり、将来のリターンを保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行っていただきますようお願いします。

コメント